なぜ目標CPAに誤りがあるとCPAは達成されないのか

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広告を運用する上で重要な指標はいくつかありますが、顧客獲得単価であるCPAは特に重要とされています。広告運用者は日々CPAを追いながらどうにか達成させようとしていることでしょう。中には上司から実現不可能なCPAを決められたりと不幸でしかありません。いまだにCPAは誤解されている部分があり、達成すべき目標CPAが正しく設定されていないことがよくあります。ではなぜ目標CPAが正しく設定できていないのか。計算式や例を使いながら目標CPAについて誤解を減らし、適切な目標CPAを設定していく方法をご説明します。

CPA(顧客獲得単価)とは

広告を使う上でその成果(コンバージョン)がどのくらい上がったのかを知ることはとても重要です。インターネット広告ではその成果の測定が容易であり、その成果1件にかかったコストのことをCPA(顧客獲得単価)と呼びます。かかったコストということなので低ければ低いほど優れている指標です。

例えばダンススクールで新規会員を集めるためにある月にウェブ広告で50,000円、チラシで100,000円使ったとします。インターネット広告費とチラシにかかった広告費を合わせると150,000円かかっています。この月、インターネット広告経由で1人、チラシ経由で4人新規会員が入会したとすると
CPAは以下のように計算できます。
  • インターネット広告では 50,000円 ÷ 1件 = 50,000円
  • チラシでは 100,000円 ÷ 4件 = 25,000円
  • トータルでは 150,000円 ÷ 5件 = 30,000円
この例ではチラシ経由での顧客獲得単価、つまりCPAは1件あたり25,000円でした。インターネット広告では50,000円、全体で30,000円が獲得単価ということになります。この結果からチラシの方がウェブ広告よりも安く新規獲得ができたということがわかります。このように比較対象があるとでCPAが高いのか低いのかの判断もしやすくなります。

目標CPAが正しく設定されていない理由

広告でコンバージョンが発生するとそのコンバージョンの獲得単価が分かるわけですが、広告費●●円ぐらいで一件のコンバージョンを獲得したい!と数値目標を設定すると、それが目標CPAになります。実際のCPAは広告の稼働実績から算出されますが、この目標CPAの決め方が重要と言っても過言ではありません。目標CPAを正しく理解して設定していなければ達成することがただ困難なだけの目標にしかなりません。ではなぜこのような目標CPAになるのか?それには理由があります。

そもそもの目標CPAが間違っている

CPAは低ければ低いほど良いと言いましたが、このことから稼働実績のCPAから少しでも安くというやり方で目標CPAをざっくり決める方がわりと多くいます。また数値に明快な根拠がなくなんとなく決めているという場合も多く見受けられます。目標CPAではなく願望CPAと言ったところでしょう。

数値の根拠を持つ目標CPAを決める方法として限界CPAから考える方法があります。限界CPAとは一件の成約で得られる利益を全て広告費に当てたものとして計算します。この限界CPAを上回ると赤字となるため、広告としては機能していません。幅広い価格帯で多くの商品を扱うECサイトでは細かい計算は難しいですが、全体で考えてみると確保したい利益から広告に回すことができる費用を見積もることが出来ます。
限界CPAの例

ざっくりCPAを決めてはダメな理由

目標CPAには広告予算と獲得したいコンバージョン数から導く公式が存在します。また広告予算はクリック単価とクリック数を掛け合わせたもの、獲得したいコンバージョン数はコンバージョン率とクリック数を掛け合わせたものです。このことから以下の式に変化をします。

目標CPA = 広告予算 ÷ 獲得したいコンバージョン数
= ( 目標クリック単価 * クリック数 ) ÷ ( コンバージョン率 * クリック数 )
= 目標クリック単価 ÷ コンバージョン率
このことからもわかるように目標CPAを実現するには目標クリック単価とコンバージョン率が大きく影響します。コンバージョン率は実際に広告経由でコンバージョンから算出ができるので、数式に当てはめると目標クリック単価を出すことができます。そしてこの目標クリック単価が現在の平均クリック単価を大きく下回る場合、実現困難な目標CPAであることがわかります。ざっくり目標CPAを決めると実現困難なCPAになることが多いです。
クリック単価が大きく下回るということは、実際に単価を下げるとインプレッションが下がりCVは減少します。CVが減少すれば目標CPAに到達することはあり得ません。まずは現状のコンバージョン率を把握し、目標CPAが妥当であるか、クリック単価やサイトの改善でコンバージョン率を改善することを含めて考えていく必要があります。

実現困難なコンバージョン率

目標CPAを限界CPAから決めたものの十分な成果がでない場合があります。目標CPAと実際のCPAで大きな乖離がある場合、コンバージョン率で大きな壁があることがわかります。限界CPAはLTV(ライフタイムバリュー)で考えた方が良い場合があります。ライフタイムバリューとは生涯顧客価値であり、一人の顧客でみてその顧客が何度も購入などでお金を生み出す場合の顧客の価値を表しています。
LTVの例
このように1回だけの限界CPAよりはLTVから3回分の限界CPAの方が額が大きいため、顧客を獲得するのに多くのコストをかけることが出来ます。目標CPAが上がることによって、目標クリック単価や必要とするコンバージョン率も緩やかになります。

【例】
・月10000円の会員サービスで利益が5000円=限界CPA5000円
・広告のクリック単価500円
上記の条件でひと月分の目標CPA(限界CPA)5000円で考えると必要なコンバージョン率は
目標CPA 5000円 = クリック単価 500円 ÷ コンバージョン率
つまり コンバージョン率 = 500円 ÷ 5000円 = 10%
もしクリック単価が500円だった場合に限界CPAを3ヶ月分で考えると必要なコンバージョン率は
目標CPA 15000円 = クリック単価 500円 ÷ コンバージョン率
つまり コンバージョン率 = 500円 ÷ 15000円 = 3.33%
1ヶ月分であればコンバージョン率が10%無いと成立しないCPAですが、LTVから出した3ヶ月分であればコンバージョン率3.3%と現実的な数値となります。このようにLTVで目標CPAを考えることで達成可能な目標となり、実施可能な改善が期待できます。

裏付けのある目標CPAを設定した方がいい理由

CPAは低ければ低いほど良いという理由から、別に裏付けのある目標CPAは必要がないと思われるかもしれません。しかし、これには大きな問題があります。CPAが低いということにフォーカスしてしまうと目標CPAを下回っているにもかかわらず、コストを抑えるような運用に傾くためコンバージョンが減り、CPAは低いもののビジネスが小さくなっていきます。

目標CPAは確かに低ければ低いほど効率よくコンバージョンを獲得できていることにはなりますが、実際のCPAが目標CPAを下回っている場合は新規にコンバージョンを獲得するためにまだ予算に余裕があると考えることが出来ます。予算に余裕があれば新しくキャンペーンを運用したり、クリック単価を上げてインプレッションを増やしたりとコンバージョンにつなげることが出来ます。CPAを下げることだけに注目するとこの判断ができません。このことからも裏付けのある目標CPAは設定した方が良いわけです。

まとめ

目標CPAが正しく設定できていない多くの理由はLTVを考えずになんとなく決めたCPAが原因です。そのため矛盾が生じる目標クリック単価であったり、実現困難なコンバージョン率が必要になったりとサイト改善をするも全く達成されずに心が折れることにも繋がります。コンバージョン率の乖離が大きいためにその改善成果を軽視してしまい、本当は効果があった施策も正しく評価できない可能性もあります。

またCPAだけにフォーカスを当てるとコンバージョンの総数は減少してしまいます。特に会社員で会社からの指示が曖昧なCPAに注力しているところは積極的な広告展開ができず現状維持の運用になってしまい、その結果としてCPAはわずかに改善するもののコンバージョンの機会を失いかねません。目標CPAは裏付けのある数値を出し、目標CPAに到達後に余力で新しい展開をすると良いでしょう。

<この記事のポイント>

・目標が適切に設定されていない場合は目標CPAの達成は困難

・LTVに基づく限界CPAから目標CPAを決定する

・裏付けのある目標CPAを設定することでビジネスが小さくなるCPA設定を回避することができる

About Daigo Hirano 52 Articles
広告代理店や飲食業を経てECへ。熊本を根城にしてウェブ解析やウェブ広告の運用代行、SEOコンサルタントなどウェブ集客に特化した広告代理店をはじめました。 ウェブ広告はGoogle広告、Yahoo広告などのリスティング広告のほか、Facebook広告などSNS広告も行っております。 熊本・福岡・東京を中心に、大手代理店にお願いできない中小企業にスキルと知識を用いて集客支援をしています。

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